2005年09月14日

イサム・ノグチ庭園美術館


四国旅行紀 ー 8月2日

こんなところを曲がるの?というほどの細い路地に車を進めていくと、美術館の受付のある木造の建物が見えてきた。既に2、3台の車が駐車場に止まっている。朝早く京都を出発したのだが、山陽自動車道、瀬戸中央自動車道のパーキングエリアで、こまめに休憩しながら走っていたのと、道を間違えて遠回りをしてしまったために、予約時間の午後1時にようやく間にあった。だから、先に昼食の讃岐うどん(山田家)を食べる予定が逆になってしまった。

受付の建物に入って手続きをすませる。さすがにイサム・ノグチは国際的にも有名なだけあって、外国人の訪問者も多い。また、野外を歩き回るため、傘(日傘にもなるらしい)麦藁帽、虫除けスプレーなども用意されている。今日は快晴ゆえに、完全防備が必要だ。

まず、案内人と共に「石壁サークル」と呼ばれている作業場へと向かう。石壁を円形に積み上げた野外アトリエには、まるでストーンサークルのように、完成・未完成の作品が置かれている。展示されていると言うよりも、「あるべくしてある」という感じだ。イサムは、このように多くの石を同時に置いて製作していたそうである。また、完成品のいくつかは、隣接している農家を移築したギャラリーに展示されているが、それほど数は多くない。その上、不運なことに、現在イサム・ノグチ展が札幌、東京と行われるために、代表作の「エナジー・ヴォイド」が貸し出されていた。美術館のHPに載っている写真のように、藁入り土壁の前に置かれた作品を体験できなかったのはとても残念だ。

次に、丸亀の豪商の屋敷を移築したイサムの住居を見学する。残念ながら、この建物は県の文化財になっているらしく内部にはいることができない。窓から覗き見ると、彼が洋式の生活と日本家屋を調和させるべく、床にレベル差をつけるなど様々な改造を施していることがわかる。引き戸や格子の意匠もさりげなくデザインされている。その建物の背後には、彫刻庭園と呼ばれる築山のある庭がある。築山は豊満な乳房の形をしていて、頂上には天然石が一つ立っている。イサムが模型まで作り、さらに何度も何度も手を加えた言われるその形は、彼の私的なエロティシズムを感じさせる。頂上に立つと、左手に屋島を右手に瀬戸内海を見渡せる。彼はこの場所をこよなく愛し、この景色をいつまでも眺めていたのだという。

イサム・ノグチ庭園美術館は、確かに彼の代表作を集めて作られた美術館ではない。だが、彼が鑿をふるい、磨いた石たちがそこにあることは、牟礼町の海風・太陽といった自然が彼に与えた天啓の一端を、僕たちに垣間見させてくれるのだ。ここでは芸術作品が生まれ出でて、芸術作品と名付けられる瞬間に僕たちは立ち会うことができる。


投稿者 kitazawa : 19:24 | コメント (0) | トラックバック